私立高校の「単願受験」は「その後がとても大変」。

いよいよ「受験シーズン」となってきました。

ここ埼玉県の「私立高校」の入試の方法は、そのほとんどが「推薦入試」のような形をとっています。学校で実施される学力テスト(「校長会テスト」と呼ばれるもの)や、埼玉県内なら有名な「北辰テスト」のような模擬試験の成績を私立高校に持参し、それぞれの高校が設けている「合格基準」に達していれば、入学試験を待たずして「事実上の合格」が得られるシステムになっています。

私立高校には「合格したら絶対に入学する」=「単願受験」と、「合格しても入学するかどうかは、他の志望校の受験結果次第とできる」=「併願受験」とがあります。そして、ほぼすべての学校で「単願受験」のほうが「併願受験」よりも合格基準が「緩く」設定されています。

私はこの入試方法は完全な「大人の都合」で出来上がってしまったものであり、まるで受験生のことなど考えられてはいないと危惧しています。特に。成績が振るわない子の進路を早々と確定したい「学校の先生」や「塾の先生」。そして少しでも早く、生徒の確保をしたい「私立高校の先生」。そして「少しでも早く受験のプレッシャーから解放されたい受験生本人とその保護者」。全ての人間の思惑が、受験生を「私立単願」へと走らせます。

「私立単願」の場合、早い子では「9月末」には高校受験が終了してしまいます。埼玉県の場合、公立高校の試験日は2月の下旬ですから、「5か月も早く」受験が終わることになります。受験生本人も保護者も、それはそれは楽でしょう。「どうしてもその高校に入りたい」という前向きな気持ちで単願受験を希望するならまだしも、「早く楽になりたい」という安易な気持ちでの単願受験はひどくお勧めしません。以下にその理由を挙げたいと思います。

①まず、私立単願の場合、高校入学後「併願受験をして入学してくる生徒さんの方が圧倒的に学力が高い」という問題があります。先述しましたように、「単願受験の合格基準はゆるく」設定されているため、「もともと併願受験をしてくる生徒さんたちの方が学力が高く」、しかも、併願受験の生徒さんたちは単願受験の生徒さんたちよりも「3か月(長いと5ケ月)長く受験生」をやっており、そのうえ「不合格であるにしろ、高校受験経験」は得てくるのですから、「単願受験生と併願受験生の間には、入学した時点ですでに同じ高校に通う子とは思えぬほどの差がある」ことを知っておくべきです

ですから「単願受験」の生徒さんは、「入試」もないのに「併願受験の受験生よりも勉強しなければ」到底追いつけないのです。これは、受験生を続けるよりも遥かに厳しく、難しいことなのではないでしょうか。

②大学受験の合格実績において、「公立高校 < 私立高校」であった時代はすでに終わっている、という問題も。高校説明会において、各私立高校が声高に叫んでいる「大学の合格実績は~」は、実はもう、同レベルの公立高校と大差ない、いえ、下手をすれば負けていることすらあります。今、埼玉県の公立高校は進学に対し「かなり努力」をしています。何年か前までは大きな開きがあった「進学実績」も徐々にその差は小さくなっています。

理由はいくつかありますが、在籍する生徒さんたちの「高校受験経験の有無」がかなり大きいと私は思います。公立高校の生徒たちは、「受験で勝ち抜く確かな学力」は勿論、全員が「厳しい高校受験を戦い抜いた経験」を持っています。「自身の学習能力の把握」「最後まで戦い抜く精神力」「勝負所をかぎ分ける嗅覚」「頑張るべきときに、踏ん張れたという自信」「受験本番とはこういうものであるという実戦経験」。これらが、私立単願の生徒さんには身に付きません。

私立高校の進学実績の多くは「併願受験生」によってもたらされていることも受験界ではよく知られ、「高校受験経験の有無」が「その後の未来」においてとてつもなく大きな「財産」であることが分かります。

「高校受験」という経験は、一生のうちでほとんどの人が一度しか経験する「チャンス」がありません。その「チャンス」をフイにするのは勿体ない気が、私はします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です